フリーランス・個人事業主が気にしたいコンプライアンスを考える

今まで企業に勤めていたけど、
「フリーランスになった」「個人事業主になった」「副業をはじめた」という方で、
コンプライアンス関係の法律で気にしておかなきゃいけないことなんだろう?
と、感じている方は沢山いらっしゃると思います。
今回は、そんな人たち向けに、自分が被害者とならないためにIT関連のやりとりにおいて、
陥りやすい実例を交えて、最低限気にしておきたいコンプライアンスに関して考えていきます。

コンプライアンスとは

企業や個人には、社会の一員として、ルールを守り、
利害関係に配慮した振る舞いが求められています。

非常にあいまいな表現ではありますが、
 ・一般的な視点でみて、ルールを守れない
・利害関係に配慮せずに立場を利用した振る舞いをした
などが「コンプライアンスに反している」ということになります。

厚生労働省から、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」が策定されています。
最低限こちらの内容を読んでおくことをオススメします。
正直記事にする必要がないくらい、厚生労働省のホームページに詳しく記載がされています。
もし、困っていることがあれば、
フリーランス・個人事業主の方が弁護士に相談できる「フリーランス・トラブル110番」を設置しているので、
こちらから相談しましょう。

コンプライアンスに反することの影響について考える

仮に自身や、会社の同僚、アルバイトの友人が、不公正・反社会的な行為を行ってしまった場合、
社会的信頼を低下させ、ビジネスの機会を逸失する恐れが考えられます。

コンプライアンスに違反した責任を企業がとらなくてはいけない場合、
同一企業に勤める従業員の人権を侵害するだけでなく、職場環境を悪化させたり、人材の流出、
企業の倒産を招くおそれがあります。

コンプライアンスに違反した責任が個人に課せられる場合(フリーランス/個人事業主)、
今まで積み上げてきたビジネスを逸失するばかりでなく、社会的な立場、家族への影響、人間関係の瓦解などを
招くおそれがあります。

例えば、ある企業で働いているアルバイトや社員が行ったコンプライアンス違反の場合、
社員やアルバイトだけが処罰の対象となるだけではなく、企業や同じ職場の従業員の方などに対しても
社会的制裁がされ、職場環境の悪化や人材の流出、職場の閉鎖などを伴う場合があります。

企業に属する人だけがコンプライアンスを守った行動をすれば良いのではなく、
個人事業主/フリーランスの方もコンプライアンスを守った行動をする必要があります。

加えて、被害者となった場合は、
個人事業主/フリーランスだから泣き寝入りしなくてはいけないというわけではないため、
コンプライアンスに関わる最低限の内容を抑えておく必要があります。

コンプライアンス違反の種類には何があるか

コンプライアンス違反と呼ばれるものには、以下のような種類のものがあります。

会計不正/事務処理不正税法違反、粉飾決済
不公正取引独占禁止法違反、下請法違反
贈収賄刑法違反、国家公務員倫理法違反
業務上の立場の私的利用横領・背任、リベート受領、インサイダー取引
人権侵害パワハラ、セクハラ

上記にも記載した通り、コンプライアンス違反に対しては、
企業も個人も以下のようなリスクを保有していることを認識する必要があります。

金銭的な損害やビジネス機会の喪失、会社の信用、企業イメージの低下、
職場の動揺、モチベーションの低下、人的損失 など

企業に属している場合は、加害者となった場合も、被害者となった場合も、
企業の法務部や専属弁護士などにプロがある程度、
守ってくれたり、対応方法などを教示してくれるかもしれませんが、
個人の場合は、自分で守るしかありません。
発生してしまったときの迅速な対応や未然・再発防止や、
自分が被害者になってしまったときのために備えましょう。

コンプライアンスに関する法律について

ここでは、コンプライアンスに関連する法律において、
フリーランスや個人事業主が関係しやすい法律を紹介致します。

下請法とは?

下請代金の支払遅延を防止することにより、
下請業者に対する ①取引の公正化 ②利益保護
を目的とした法律で、
親事業者に対して、4つの義務と11の禁止事項が課せられる法律です。

下請法の4つの義務は以下になります。
1.書面の交付、2.支払期日を定める、3.書類の作成、4.遅延利息の支払

11の禁止事項は以下になります。
1.受領拒否、2.下請代金の支払遅延、3.下請代金の減額、4.返品、5.買いたたき、
6.購入・利用強制、7.報復措置、8.有償支給原材料等の対価の早期決済、
9.割引困難な手形交付、10.不当な経済上の利益の提供要請、11.不当な給付内容の変更及び不当なやり直し

11の禁止事項のいずれかを行っていると認められた場合:指導/勧告/罰金
※勧告処分を受けると、公正取引委員会HPで会社名含め事案が公表される

エンジニア業界では、下請法の抵触は可能性があるため、
もしフリーランスで作業をされている方で、上記に思い当たる節がある場合や
不当な扱いを受けた場合は、該当しないか確認してみましょう。

実例)
あるシステム開発でトラブルが発生し、至急な対応が必要なため、
「契約外の作業」をあとから契約はするから、対応してほしいとお願いを受け、
作業を急ぎ実施したが、それに対する対価を要求しても支払がされない。
→ これは、口頭発注と呼ばれるものの一つで、下請法の4つの義務違反や禁止事項に抵触する内容となるため、
罰金などの罰則を受けることとなります。

偽装請負とは?

書類上、形式的な請負契約であるが、実態としては、労働者派遣であるものと指します。
請負契約と派遣契約の違いは、発注者と受託者側の作業従事者との間に、指揮命令関係が生じるか否かとなります。
請負:発注者が請負従事に直接指揮命令不可
派遣:発注者が派遣労働者に直接指揮命令可
※請負契約にも関わらず、発注者が請負従事者に直接指揮命令を行っている場合、偽装請負となり法令違反となります。

偽装請負等の違反行為を行った場合、発注者が請負従事者(実質的な派遣労働者)に対して、労働契約の申込みをしたものとみなし、
請負従事者の承諾により、発注者が雇用しなければならない。

実例)
発注元企業から発注された企業Aを介して、フリーランスとしては働いている場合に、
フリーランスとして働いている場合、企業Aからの指揮命令は受けられるが、発注元企業から指揮命令は受けれない
※効率性の観点からありがちですが、あくまでも、発注元企業は、企業Aに属する方にしか、指示ができません。

架空取引

取引の実態や実効性が無いにも関わらず、取引を行ったように見せかける処理
※取引先との共謀がなければできない(架空・水増売上、架空・水増発注、架空・循環取引)

詐欺罪、背任罪、法人税法違反、金融商品取引法違反
上記の違反は、粉飾決算につながる可能性があります。

個人事業主とフリーランスが気にしたいコンプライアンスと法律のまとめ

今回は、例をエンジニア目線で具体化して紹介しました。
加害者にならないだけでなく、被害者にならないことも大きな意味を持ちますし、
個人だから泣き寝入りしなくてはいけないということもありません。
個人事業主やフリーランスになったら、まずは
フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」を確認しましょう。

・下請法に該当するふるまいをされてないか?していないか?
・偽装請負に該当するやりとりをされていないか?していないか?
・架空取引となるような美味しい話ではないか?

以上、3点は最低限意識しましょう。

最新情報をチェックしよう!